近年、クレジットカード業界では「改悪」という言葉をよく耳にするようになりました。特にプレミアムカードの代名詞であるアメリカン・エキスプレス(通称:アメックス)において、2025年は大きな変更が続々と実施されています。本記事では、アメックスカードの改悪の実態、時期、そして対応策について詳しく解説します。
アメックス・ビジネス・ゴールドカードの大幅値上げ(2025年3月~)
年会費改定情報
改定前:36,300円(税込)
改定後:49,500円(税込)
適用時期:
・新規申込者:2025年3月4日(火)以降の申込分から
・既存会員:2025年5月21日(水)以降の引き落とし分から
アメックス・ビジネス・ゴールドカードは2025年3月4日から大きな変更が実施されました。最も注目すべき点は、年会費の大幅値上げです。この13,200円もの年会費値上げは非常に大きな改悪と言えるでしょう。特に、ビジネスにおいて経費削減を目指す経営者や個人事業主にとっては痛手となります。
代替特典:ビジネス・フリー・ステイ・ギフト
年会費値上げの代わりに、年間最大40,000円相当の宿泊料金が無料になる「ビジネス・フリー・ステイ・ギフト」が追加されました。
・年間300万円以上の利用で1泊
・年間500万円以上の利用で2泊
・対象ホテルは国内300ヵ所以上
・無料宿泊は従業員に贈ることも可能
代替特典:追加カードの年会費無料化
付帯特典がない代わりに年会費無料の追加カードが発行できるようになりました。
・最大99枚まで発行可能
・従来の付帯特典ありの追加カード(年会費13,200円)と併用可能
・役員には特典あり、一般従業員には特典なしの無料カードという使い分けが可能
空港ラウンジサービスの対象縮小(2025年6月~)
空港ラウンジ特典の変更
変更時期:2025年6月1日(日)から
変更内容:一部の空港ラウンジが特典対象外に
影響:これまで無料で利用できていた15ヵ所の国内空港ラウンジが有料化
2025年6月1日以降も特典対象となる主要空港
新千歳空港
羽田空港(第1・第2・第3ターミナル)
成田国際空港(第1・第2ターミナル)
中部国際空港
関西国際空港
福岡空港
ハワイ ダニエル・K・イノウエ国際空港
その他、伊丹空港、神戸空港、広島空港、長崎空港、熊本空港、鹿児島空港、那覇空港
アメックスカードの大きな魅力の一つである空港ラウンジサービスにも改悪の波が押し寄せています。これまで搭乗券とアメックスカードの提示で無料利用できていたラウンジが一部有料化され、出張や旅行が多いカード会員にとって大きなデメリットとなります。2025年6月1日以降は、対象外となる空港ラウンジの利用に対して料金が発生するため、頻繁に利用していた方は事前に確認が必要です。
ゴールドカードの刷新と切り替え(2024年2月~)
ゴールドカードのリニューアル
変更時期:2024年2月20日から
変更内容:従来の「アメックス・ゴールド」の新規申込停止
新カード:「ゴールド・プリファード・カード」への一本化
年会費:31,900円→39,600円に値上げ
アメックスは2024年2月20日、「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・プリファード・カード」をリリースし、従来の「アメックス・ゴールド」の新規申込を停止しました。年会費は7,700円引き上げられ39,600円になりましたが、既存の「アメックス・ゴールド」会員は現状の年会費で継続利用が可能です。値上げの代わりに、トラベルやグルメ関連を中心に特典内容が充実し、また外観も従来のプラスチック製からメタル製に変更されました。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスの改悪(2025年6月~)
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスの変更点
年会費:22,000円(税込)→33,000円(税込)に値上げ
適用時期:2025年8月4日支払い分より
ボーナスポイント・パートナーズ:2025年5月31日の利用分をもって終了
プライオリティパスの同伴者料金:2,200円(税込)→4,400円(税込)に値上げ
セゾンが発行するアメックスブランドのカードにも改悪の波が及んでいます。特に「ボーナスポイント・パートナーズ」の終了は大きな痛手です。このサービスでは対象店舗でのカード利用で、通常の2~10倍の永久不滅ポイントが獲得できていました。また、空港内のラウンジとは別に、プライオリティパスの同伴者料金も倍額に値上げされており、家族や同僚と一緒に利用する機会が多い方には大きな改悪となります。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスの新特典
サイバー攻撃保険の新規付帯
プライベート用プラチナカードの年会費優遇
24時間チャット対応コンシェルジュサービス
セゾンゴールド・アメックスの改悪(2024年4月~)
セゾンゴールド・アメックスの変更点
変更時期:2024年4月1日から
変更内容:国内空港ラウンジサービスに年2回の利用制限が追加
影響:同一利用日に同じラウンジへの再入場も1回としてカウント
セゾンゴールド・アメックス・カードも2023年12月22日に特典変更が発表され、2024年4月1日から実施されています。主な変更点は、これまで利用制限がなかった国内空港ラウンジサービスに年2回の利用制限が追加されたことです。しかも、同一利用日に同じラウンジへの再入場も回数としてカウントされるため、乗り継ぎや時間つぶしで複数回利用する方には実質的に1日で利用枠を使い切ってしまう可能性があります。
セゾンローズゴールド・アメックスの改悪(2023年12月~)
セゾンローズゴールド・アメックスの変更点
変更時期:2023年12月から
スタバチケット:毎月500円分のドリンクチケット付与が廃止
スタンプサービス:1ヶ月に1万円以上利用でスタンプが貯まるサービスが廃止
年会費:月額980円→年額11,000円に変更(年1回1円以上の利用で翌年度無料)
セゾンローズゴールド・アメックスは2023年12月から、サービス内容が改定されました。スターバックスでの利用を前提とした特典が廃止され、年会費体系も大きく変更されています。ただし、年会費は年1回1円以上の利用で翌年度無料となるため、最低限の利用で実質年会費無料でカードを保有し続けることができます。
プライオリティ・パスの利用制限(2025年1月~)
プライオリティ・パスの改悪内容
改悪時期:2025年1月から
内容:一部カードのプライオリティ・パスでレストラン・スパ等の利用が対象外に
例:楽天プレミアムカードは2025年1月2日からレストラン利用が不可に
クレジットカードの付帯特典として人気のプライオリティ・パスにも大きな変更がありました。通常のラウンジ利用に加えて、空港内のレストランが利用できることがプライオリティ・パスの魅力の一つでしたが、その特典が次々と削減されています。2025年1月からJCBやMUFGの一部クレジットカードに付帯するプライオリティ・パスの利用範囲が大幅に制限され、2025年1月2日には楽天プレミアムカードもレストラン・スパ等の利用が対象外となりました。セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスは現時点でレストラン利用制限がないため、この特典を重視する方にとっては貴重なカードとなっています。
国税支払いでのポイント付与制限(一部カード)
国税支払いポイント付与の制限
内容:一部提携カードで国税支払い時のポイント還元に上限設定
対象:本家アメックスカードではなく、提携カード(例:Marriott Bonvoy アメックスカードなど)
推奨:税金支払いは300万円以内に抑えることが推奨
アメックスの提携カードにおいて、税金支払い時のポイント還元にも制限が設けられました。特に高額納税をクレジットカード払いしてポイントを貯めていた方には大きな影響がありそうです。Marriott Bonvoy アメックスカードでは2023年1月1日にも改悪があり、ポイント付与の上限金額がさらに下がりました。ただし、本家アメックスカードでは現時点で国税支払い時のポイント付与上限はありませんが、税金や年金の支払いではポイントが通常の半分(200円で1ポイント)しか貯まらない点には注意が必要です。
ポイントプログラムの変更
ポイントプログラムの変更点
フィンエアー:ポイント移行提携終了
超優待:最大10%還元→5%還元に変更(2024年7月1日から)
セゾンマイルクラブ:年会費無料→5,500円(税込)に変更(セゾンプラチナ・アメックスの場合)
ポイントプログラム関連でもいくつかの変更がありました。アメックスのメンバーシップ・リワード・プログラムからフィンエアーへのポイント移行提携が終了したほか、セゾンカードの「超優待」サービスでの還元率が2024年7月1日から半減し、セゾンマイルクラブの年会費も有料化されています。特にポイントやマイルの収集を重視している方は、こうした変更が総合的な還元率に影響するため、代替手段を検討する必要があります。
アメックス・グリーンカードの特典拡充(2025年)
アメックス・グリーンカードの新特典
2025年にアメックス・グリーンカードに新しい特典とサービス拡充が発表されました。
これにより、改悪が続くプレミアムカードに対して、エントリーモデルとしてのグリーンカードの魅力が高まっています。
ANAアメックスカードの状況
ANAアメックスカードの最新情報
ANAアメックスカードは現在のところ大幅な改悪は報告されていませんが、航空業界全体の変化や他のアメックスカードの動向を考えると、今後の変更には注意が必要です。
マイル移行手数料については引き続き発生するため、JALカードとの比較検討も重要になります。
改悪への対応策
費用対効果の再評価
年会費の値上げにより、カードの費用対効果を再評価する必要があります。特にビジネス・ゴールドカードの場合、年間49,500円の年会費に見合うだけの利用をしているか、新特典である「フリー・ステイ・ギフト」を活用できるだけの年間利用額(300万円以上)があるかを検討しましょう。
代替カードの検討
アメックスの年会費が見合わないと判断した場合、他社の類似カードへの乗り換えも選択肢になります。例えば、セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスは、値上げ後も33,000円とアメックス・ビジネス・ゴールドの49,500円より安価です。また「apollostation PLATINUM BUSINESS」のように、22,000円の年会費で、初年度無料・翌年以降も年間300万円以上の利用で年会費無料になるカードも選択肢となります。
複数カードの活用戦略
一枚のカードですべてのニーズを満たすのではなく、目的別に複数のカードを使い分ける戦略も効果的です。例えば、日常利用にはポイント還元率の高いカードを、旅行には空港ラウンジ特典の充実したカードを使うといった方法です。セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスとセゾンプラチナ・アメックスの2枚持ちによる年会費無料化や特典の相互補完なども検討価値があります。
新特典の積極活用
年会費値上げの代わりに追加された新特典を最大限活用しましょう。例えば、アメックス・ビジネス・ゴールドカードの場合、「ビジネス・フリー・ステイ・ギフト」を確実に利用できるよう年間利用額を調整したり、無料の追加カード発行を活用して従業員の経費管理を効率化したりすることが考えられます。また、セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスの新しいサイバー攻撃保険なども、ビジネスにおける実際のリスク軽減としての価値を評価してみましょう。
ポイント交換戦略の見直し
ボーナスポイント・パートナーズの終了などによりポイント獲得が難しくなる中、効率的なポイント交換先を見直すことも重要です。例えば、セゾンカードの永久不滅ポイントは年会費支払いに充当すると還元率が最大化(1永久不滅ポイントあたり5.5円相当)するなど、お得な使い方を探しましょう。また、ポイントの有効期限が無期限になるメンバーシップ・リワード・プラスへの登録も検討価値があります。
空港ラウンジ代替策の検討
空港ラウンジサービスの対象縮小に備え、代替手段を検討しておくことも重要です。プライオリティ・パスが付帯する他のカードの活用や、ラウンジ・キー、ドラゴン・パスなどの独自のラウンジプログラムの利用も選択肢となります。また、航空会社のステータス会員になることでアクセスできるラウンジもありますので、頻繁に特定の航空会社を利用する場合はマイレージプログラムへの集中投資も検討しましょう。
まとめ:変化に合わせた賢い選択を
アメックスカードの改悪はカード会員にとって大きな影響をもたらしますが、新特典なども加味して総合的に判断することが重要です。自分のライフスタイルや利用パターンに合わせて、カードの継続や乗り換えを検討しましょう。
変化の激しいクレジットカード業界において、最新情報をキャッチアップし、自分にとって最適な選択をすることが、賢いカード利用の鍵となります。年会費の値上げや特典の変更は「改悪」と一概に捉えるのではなく、自分のニーズに合ったカードを選び直す機会と考えてみてはいかがでしょうか。
また、アメックス自体もユーザーからのフィードバックやマーケットの変化に応じて戦略の見直しを行うことがあります。2025年後半には新たな特典プログラムや入会キャンペーンなどが登場する可能性もありますので、継続的な情報収集と柔軟な対応が、プレミアムカードを最大限に活用するポイントと言えるでしょう。